拾玉得花
- 2015/01/05
- 15:29
「よく心して考えてみると、宇宙のあらゆる現象、是非善悪の諸行為、情あるもの情なきものも、ことごとく序・破・急の発展秩序を備えている。鳥のさえずりや虫のなく声にいたるまで、それぞれの秩序法則をもって鳴くものであって、その秩序というのは序破急である。ソウであればこそ、鳥や虫の声に面白い音楽的感情というものも生じ、情趣を誘う心も感じ取れるのであって、もし展開と完結の秩序が成立しなければ、自然現象を面白いとも情趣ありとも感じられるはずがない。一日の演能に際しても、予定の演目が終わって、観客の賞賛を受けるのは、その日の演能全体の序・破・急が成就していたからである。また、その演目一つ一つの上演の中にも、それぞれの序破急の成就ということがあるはずである。一つの舞、ひとつの謡いのなかに於いても、面白いのは序・破・急の天海と完結のゆえである。さらに、舞のなかの一つの手の動き、ひとつの足踏みの響きにも序・破・急の秩序がある。面白いと感動するのは、観客一同の鑑賞行為のなかに序・破・急があるからであり、そのように感動させる一つの舞台効果は演技者が序破急の経過によって創りだすのである。」
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